老人・高齢者の後遺症と慰謝料

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老人・高齢者の後遺症と慰謝料

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

老人・高齢者が交通事故で後遺症を負ったとき、他の場合に比べて慰謝料をいくらもらえるのか、家族の慰謝料や慰謝料の増額理由も含めて調査してみました。

老人・高齢者の慰謝料の相場は!?

老人・高齢者は、生きてきた期間が長いから、慰謝料の金額が下がることもあるんですか?

老人・高齢者がいかに人生を享受していても、後遺症の慰謝料が一般より低くなることはほとんどないよ。

お年寄りは大好きなので、わたしも賛成です!

老人・高齢者は、子供や若者と比べて、人生を享受している度合いが高いので、後遺症の慰謝料は低くなるのでしょうか?

弁護士さんによれば、たしかに老人・高齢者は人生を享受し、全うしているので、慰謝料が低めにしか認定されないという主張もされることがあるようです。

しかし、実際の裁判では、老人・高齢者だからといって、後遺症の慰謝料が一般の相場よりも低くなることはほとんどないようです。

老人・高齢者の場合でも、後遺症の等級に応じた後遺症の慰謝料が決まっていて、基本的にはこの相場に応じて慰謝料を認めてもらえるそうです。

ただし、弁護士に依頼せずに保険会社に慰謝料を請求しても、相場を大幅に下回る金額しか払ってもらえないようです。一方、弁護士に依頼すれば後遺症の慰謝料が約2倍程度まで大幅にアップするというから、弁護士に依頼しない選択肢はなさそうですね。

(まとめ表)

後遺症の慰謝料の相場(万円)

等級

慰謝料相場

任意保険基準との差額

等級

慰謝料相場

任意保険基準との差額

1級

2800

+1500

8級

830

+430

2級

2370

+1250

9級

690

+390

3級

1990

+1040

10級

550

+350

4級

1670

+870

11級

420

+270

5級

1400

+700

12級

290

+190

6級

1180

+580

13級

180

+120

7級

1000

+500

14級

110

+70

後遺症の慰謝料の相場(万円)

等級

慰謝料相場

任意保険基準との差額

等級

慰謝料相場

任意保険基準との差額

1級

2800

+1500

2級

2370

+1250

3級

1990

+1040

4級

1670

+870

5級

1400

+700

6級

1180

+580

7級

1000

+500

8級

830

+430

9級

690

+390

10級

550

+350

11級

420

+270

12級

290

+190

13級

180

+120

14級

110

+70

老人・高齢者の家族の慰謝料はどうなるの!?

後遺症を負ったお年寄りを慕っていた家族は、辛い思いをするはずです!

老人・高齢者が重度の後遺症を負うと、とくに同居中の家族に固有の慰謝料を認めてもらえることがあるよ。

これから介護でも大変になるから、慰謝料は当然です!

老人・高齢者が交通事故で後遺症を負った場合、老後を共に幸せに暮らしていけるはずであった家族が、その幸せを奪われ、介護に専念しなければならない生活を強いられることになります。

そのため、老人・高齢者が重度の後遺症を負った場合には、家族にも固有の慰謝料を認めてもらえることがあるそうです。

弁護士さんによれば、以下の表にあるとおり、1級~7級までの後遺症で家族固有の慰謝料を認めたものがあるそうです。金額は等級が高いほど大きくなる傾向ですが、一人当たり100万円~400万円の範囲で認めてもらえるそうです。

後遺症の場合には、家族のうちでも配偶者子供まで認めたものがあって、兄妹や孫まで認めてもらえた裁判例は見当たらないそうです。

ただし、8級~14級の後遺症の場合や、配偶者・子供以外の家族の場合にも、被害者が家庭内で果たしていた役割同居形態によっては、家族の慰謝料を認めてもらえる可能性もあるそうです。

弁護士さんに個別の事情を説明して、家族の慰謝料を認めてもらえそうか相談してみるといいですね。

(まとめ表)
8-7

老人・高齢者の慰謝料の増額理由は!?

老人・高齢者の慰謝料は、相場を超えることはないんですか?

手術での極度の苦痛や、加害者の不誠実な態度などが慰謝料の増額理由になることがあるよ。

お年寄りのためにも、慰謝料の相場を超えてほしいです!

老人の後遺症の慰謝料相場は分かりましたが、どんな場合でも慰謝料を増額してもらえないのでしょうか!?

後遺症が残るような重傷を負ったときは、老人・高齢者は入院することが多いですが、入院中に生死が危ぶまれる状態が継続したり、手術で極度の苦痛を被ったり、手術を何回も受けたりした場合には、慰謝料が増額されることがあるそうです。

また、加害者に事故について故意・重過失や不誠実な態度がある場合にも加算対象になるようです。

老人・高齢者の治療に関する慰謝料は、後遺症の慰謝料とは別に、入院・通院期間をもとに相場が決まっているそうですが、上記のような入院中の特別な事情は、治療に関する慰謝料の増額理由という位置づけがされているそうです。

実際の増額幅は事例によって異なりますが、治療期間に対応する慰謝料の相場より何割か増額する程度になるのが一般的のようです。

慰謝料の増額を希望する場合は、本人だけで保険会社と交渉しても埒があかないことが多いので、弁護士に依頼する必要があります。弁護士が交渉すれば、慰謝料の増額を認めてもらえることもあるようです。

(まとめ表)

慰謝料の特別増額理由 生死が危ぶまれる状態が継続したとき
麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき
手術を繰り返し受けたとき
加害者に故意・重過失・著しく不誠実な態度がある場合

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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